【障害福祉サービス】国保連請求とは?流れは?

 障害福祉サービスにおいて、国保連請求は重要な業務です。今回は、この国保連請求について基本的な仕組みや流れについて解説します。

国保連請求とは

 障害福祉サービスの事業者は、サービスを提供したら、その料金を請求することになります。その請求先はサービスを利用した利用者と、国保連です。
 サービスを利用した利用者には、利用者負担額(原則1割)を請求し、残りの9割は国保連に請求することになります。

 国保連とは、「国民健康保険団体連合会」の略称で、各都道府県に存在しており、市町村などから委託を受けて、給付費などの審査や支払いなどを行っています。

 この国保連へサービスの利用分を請求することを、国保連請求といいます。

国保連請求の流れ

 国保連請求の流れは、以下のとおりです。
 なお、サービス提供事業所は、あらかじめ都道府県などに指定申請を行い、指定を受けていることが前提です。

給付費等の支給申請(利用予定者 → 市町村等)
サービスを利用したい人は、市町村等に給付費等の支給申請を行い、審査を経て、支給決定が行われます。
契約の締結(利用予定者 ⇔ サービス提供事業所)
利用予定者は、サービス等利用計画案を作成したうえで、サービス提供事業所と利用契約を締結します。
サービスの提供(サービス提供事業所 → 利用者)
指定を受けた事業所は、サービス等利用計画等に従ってサービスを提供します。
国保連への請求(サービス提供事業所 → 国保連)
サービス提供事業所は、サービスを提供した翌月に、給付費等の請求情報を、インターネットを介して国保連あてに提出します。提出は原則毎月10日までに行います。
請求の審査(国保連、市町村等)
請求情報が国保連へ届くと、国保連による一次審査と市町村等による二次審査が行われます。市町村等は国保連に二次審査の結果を送付します。
請求(国保連 → 市町村等)
国保連は市町村等の審査結果に基づき、事業所に支払う給付費等を市町村等に請求します。
支払い(国保連 → サービス提供事業所)
市町村等は国保連に給付費等を支払い、国保連がサービス提供事業所に支払いを行います。
請求から支払いまでは、約2カ月の期間がかかります。

上限額管理とは

 利用者には、世帯の年収に応じて月ごとの負担上限額が設定されています。ひと月に1つの事業所の利用しかない場合は問題ないのですが、ひと月に複数の事業所を利用している場合、利用者負担額が負担上限額を超える可能性がある場合には、その利用者の負担上限額を管理する業務が必要になります。その業務を行うのが「上限額管理事業所」です。

 上限額管理者となる事業所の優先順位については、提供されるサービス量(標準的な報酬額の多寡)、生活面を含めた利用者との関係性(利用者負担を徴収する便宜)、サービス管理責任者の配置の有無や事務処理体等を総合的に勘案し決定されます。

 上限額管理事業所となった事業所は、他事業所から「利用者負担額一覧表」を受け取り、それをもとに「利用者負担上限額管理結果表」を他事業所に送付します。

 一方、他事業所が上限管理事業所となっている場合は、他事業所へ「利用者負担額一覧表」を提出し、その後、上限額管理事業所から「利用者負担上限額管理結果表」を受け取ります。

 これらの流れを経たうえで、各事業所は、毎月10日までに国保連への請求を行います。

【参考】利用者負担上限額管理結果表(記入例)

国民健康保険中央会 障害福祉サービス・障害児支援 請求事務ハンドブック(令和6年5月版)より

国保連への請求に必要となる情報

 国保連へ報酬の請求を行う際には、請求情報を作成する必要があります。請求情報とは、サービス提供事業所が国保連へ提出する情報のことです。

 請求情報は、サービス種別ごとに異なる様式を用いて、国保連の電子請求受付システムにより、オンラインで国保連に提出します。

 以下は、必要となる請求情報です。

  1. 請求書
     請求事業所や請求金額、請求内訳等の情報で、指定事業所番号単位で、請求先となる市町村等ごとに作成します。
     作成者は、障害者等と契約を締結し、その契約に基づいてサービスを提供したサービス提供事業所です。
  2. 請求明細書
     指定事業所番号単位、支給決定障害者等1人につき1月に1件作成されます。
  3. サービス提供実績記録表
     提供したサービスの内容の詳細を明らかにすることができる資料として添付する情報です。
  4. 利用者負担上限額管理結果表
     上限額管理の対象となる場合に必要となります。

請求のエラー

 国保連へ提出した請求情報に不整合や、報酬算定ルールに則していないものがあると「エラー」となり、「返戻」として処理されることになります。
 返戻とは、国保連から請求情報が差し戻されることです。返戻処理されると、その原因を特定し、修正したうえで再請求を行うことになりますが、期限までに間に合わないと報酬の支払いが遅れることがあるため、注意が必要です。

 システム上では、返戻が生じると、「返戻等一覧表」(返戻となったものをお知らせする帳票)が通知されます。すべての請求情報が正当となった場合、「返戻等一覧表」は通知されません。

 返戻となった際に再提出が必要な情報は、以下のようなものがあります。

サービス提供事業所指定相談支援事業者留意点
【明細書】
【実績記録票】
【明細書】
【実績記録票】
・返戻となった【明細書】を修正し、再送する場合には、【実績記録票】を併せて提出する必要があります。
・【実績記録票】のみが返戻となった場合は、【実績記録票】を修正し、提出します。
・計画相談支援給付費請求書
・障害児相談支援給付費請求書
・計画相談支援給付費請求書情報及び障害児相談支援給付費請求書情報の修正については、返戻となった受給者の明細情報を修正し、返戻となった受給者の明細情報のみを再提出します。
・返戻となっていない受給者の明細情報を含めて再提出した場合は、既に支払決定されているため、審査処理で重複エラーとなります。
【上限額管理結果票】【上限額管理結果票】・上限額管理事業所であり、かつ利用者負担上限額管理結果票が返戻となった場合に、提出する必要があります。

よくあるエラー

 国保連への請求を行う際によくあるエラーを、実際のエラーコード・メッセージとともに紹介します。

 ● 受給者証番号・市町村番号の不整合

エラーコードメッセージ
EG01資格:障害児支援受給者台帳にサービス提供年月時点で有効な受給者の認定情報が登録されていません
EG02資格:受給者台帳にサービス提供年月時点で有効な受給者の認定情報が登録されていません
EG20資格:受給者台帳で受給資格を喪失している受給者です
EG45資格:障害児支援受給者台帳で受給資格を喪失している受給者です

 受給者証の確認漏れや入力ミス等により、上記のようなエラーがよくあるようです。

 EG01とEG02は、請求明細書の受給者証番号・市町村番号が、受給者証の受給者証番号・市町村番号(国保連合会の受給者台帳に登録)と不一致の場合に検出されるエラーです。受給者証番号は、それぞれ市町村の採番ルールにしたがって付番されますので、必ず該当するサービスの受給者証を確認するようにします。

 EG20 やEG45のエラーは、市町村番号の入力誤りのパターンです。利用者が他の市町村へ転出した場合には、転出元の市町村での受給資格は喪失し、転出先の市町村で新たに受給者証の交付を受けることになります。転出後に、旧受給者証の受給者証番号・市町村番号で請求を続けると、これらのエラーとなります。

支給決定内容の不整合

エラーコードメッセージ
EG03資格:受給者台帳にサービス提供年月時点で有効な受給者の支給決定情報が登録されていません
EG07資格:障害児支援受給者台帳にサービス提供年月時点で有効な受給者の支給決定情報が登録されていません
EG13資格:受給者台帳にサービス提供年月時点で有効な受給者の支給決定情報が登録されていません

 EG03 と EG07 は、請求明細書に入力されたサービスコードが、受給者証の支給決定内容のサービス種別と対応していない場合に検出されるエラーです。
 EG13は、サービス提供年月が支給決定期間の範囲外であるときに検出されるエラーです。このエラーが出ないようにするためには、支給決定の期限が近くなったら、受給者証の更新申請の状況などを確認することが大切です。また、18歳になると受給者証番号が異なる新たな受給者証が交付されるため、新たな受給者証を確認したうえで請求情報を作成するようにします。(ただし、18 歳到達後も放課後等デイサービス等の障害児支援のサービスを20歳に到達するまでみなしで利用する場合は、引き続き同一の障害児の受給者証番号を利用します。)

上限額管理における受給者台帳情報との不整合

エラーコードメッセージ
EG05資格:請求情報の上限額管理事業所番号が受給者台帳の「利用者負担上限額情報・上限額管理事業所番号」と一致していません
EG12資格:受給者台帳にサービス提供年月時点で有効な受給者の利用者負担上限月額情報が登録されていません
EG17資格:上限額管理対象外の受給者です

 EG05は、【明細書】上の上限額管理事業所(上限額管理者)の事業所番号が、受給者台帳の利用者負担上限額管理情報における上限額管理事業所番号と異なる場合に検出されるエラーです。
 EG12 は、サービス提供年月が受給者台帳の利用者負担上限月額の有効期間の範囲外であるときにエラーとして検出されます。
 EG17は、【明細書】上の上限額管理事業所の事業所番号が設定されている一方、受給者台帳の「上限額管理有無」の項目が「1:無し」となっている場合にエラーとして検出されます。「利用者負担上限額管理事務依頼(変更)届出書」が市町村等に提出されていない可能性がありますので、受給者証に当該事業所名が上限額管理事業所として記載されていることを確認します。

上限額管理結果表の不整合

エラーコードメッセージ
EJ08受付:管理結果と管理結果後利用者負担額の関係が不正です
EJ16受付:請求明細書の上限額管理事業所の「管理結果」と「管理結果額」の関係が不正です
EC08受付:該当の利用者負担上限額管理結果票は既に受付済です
PP08支給量:上限額管理結果票に存在しない事業所の請求明細書があります

 EJ08 は、【上限額管理結果票】における利用者負担額集計・調整欄の管理結果後、利用者負担額と利用者負担額が異なる場合や利用者負担上限月額と異なる場合に検出されるエラーです。
 EJ16 は、【明細書】の管理結果額と調整後利用者負担額が異なるなど、管理結果額との不整合がある場合に検出されるエラーです。
 EC08 は、【上限額管理結果票】の作成区分が「1:新規」であるとき、既に提出済みで重複することからエラーとなるものです。既提出の【上限額管理結果票】に誤り等があり、修正して再提出する場合は作成区分を「2:修正」と、取り消す場合は作成区分を「3:取消」として送信します。
 PP08 は、【上限額管理結果票】に当該事業所番号が記載されていないことによるエラーです。また、当該事業所番号の入力誤りでもこのエラーが発生します。上限額管理事業所に確認し、上限額管理者のミスによるものであれば、【上限額管理結果票】を修正してもらう必要があります。
 上限額管理者は、【上限額管理結果票】を誤ると、関係する他の事業所の請求に影響しますので、【上限額管理結果票】の入力内容を十分精査した上で送信する必要があります。

支給量管理に係る不整合

エラーコードメッセージ
EG27※資格:請求明細書のサービス提供量が受給者台帳の「決定支給量」を超えています
EG38※資格:実績記録票のサービス実績量が受給者台帳の「決定支給量」を超えています
EG60※資格:請求明細書のサービス提供日数が原則の日数(当該月の日数から8日を控除した日数)を超えています
PP04▲支給量:請求明細書のサービス提供量の合計及び「契約支給量」の合計が受給者台帳の「決定支給量」を超えています

 EG27及びEG38は、単一の事業所の請求におけるチェックで、【明細書】のサービスコードから算出したサービス提供量、【実績記録票】から取得したサービス実績量が、それぞれ決定支給量を超過している場合に検出されます。
 EG60は、日中活動系サービスでサービス提供量(日数)が原則の日数(当月の暦日数-8日)を超えている場合に検出されます。
 PP04は、複数事業所がかかわっているときに、合計したサービス提供量及び契約支給量が決定支給量を超過している場合に検出されます。
 サービスの利用者に限らず、サービスを提供する事業者側も支給量管理を行うことが求められており、決定支給量や契約支給量に対してサービス提供量が超過していないか確認した上で請求を行うようにします。

過誤申立とは

 前月以前に支払が確定した請求情報に誤りがあり、実績を取り下げる場合に行うのが、「過誤申立」です。

 過誤処理とは、【明細書】を取り下げる(過誤をする)ことです。過誤をした請求情報に対しては、必要に応じ、再度、内容を修正した正しい請求(再請求)を行います。再請求の提出時期によって、通常過誤同月過誤に分かれます。

 なお、過誤処理は前月以前に支払が確定した請求情報に対して行うものですので、毎月の請求受付期間中に誤りがあることが分かり、修正したい場合には、過誤処理ではなく電子請求受付システムより「請求取下げ依頼」を行います。

通常過誤【明細書】取下げのうち、市町村等による過誤の申立の翌月以降に、当該過誤対象を修正した【明細書】等が再度サービス提供事業所から提出される過誤、又は再請求がない過誤のこと。
同月過誤【明細書】取下げのうち、市町村等による過誤の申立と同月に、当該過誤対象を修正した【明細書】等が再度サービス提供事業所から提出される過誤のこと。

過誤申立の流れ

 過誤があった場合、サービス提供事業所は、市町村等に「過誤申立」を依頼します。
 過誤申立を依頼した請求情報について、内容を修正し、正しい請求を行う必要がある場合は、再請求を行います。

国民健康保険中央会 障害福祉サービス・障害児支援 請求事務ハンドブック(令和6年5月版)より

 

 過誤申立の提出書類・提出時期等は、市町村等の運用によって異なりますが、おおまかな流れは以下の図のようになります。

国民健康保険中央会 障害福祉サービス・障害児支援 請求事務ハンドブック(令和6年5月版)より

 サービス提供年月の翌月に、サービス提供事業所からの請求情報の審査が行われ、その翌月に支払が行われます。過誤申立を行うのは、サービス提供年月から3月目以降になります。
 通常、市町村等による過誤申立書情報の連合会への提出はサービス提供年月から3月目以降となり(市町村等の運用により異なる)、再請求は過誤申立の翌月以降に行います。

過誤情報受け渡しの流れ

過誤情報受け渡しの流れは以下のようになります。

①サービス提供事業所から市町村等に対して過誤申立を依頼する
②市町村等から過誤申立書情報を国保連に提出する
③過誤申立の翌月に、国保連からサービス提供事業所と市町村等へ、過誤決定通知書情報を送付する

過誤申立の理由

過誤申立の際の理由としては、以下のようなものがあります。(番号は過誤申立理由コードです。)

01:台帳誤り修正による市町村申立の過誤調整
02:請求誤りによる実績取り下げ
09:時効による市町村申立の取り下げ
11:台帳誤り修正による事業所申立の実績取り下げ
32:提供実績記録票誤りによる実績の取り下げ
33:上限の誤りによる実績取り下げ
90:その他の事由による台帳過誤
99:その他の事由による実績の取り下げ

参考

国民健康保険中央会 障害福祉サービス・障害児支援 請求事務ハンドブック(令和6年5月版)

宮城県国民健康保険団体連合会「障害福祉サービス費等の請求に係るエラーコード対応マニュアル」(2023年2月版)

宮城県国民健康保険団体連合会「電子請求に関するよくあるお問い合わせ【障害福祉サービス費】」