令和8年(2026年)12月25日に、「こども性暴力防止法」が施行されます。
こどもの安全を守るための非常に重要な法律ですが、「うちの事業所にはどんな義務があるの?」「具体的に何を準備すればいいの?」と不安を抱えている放デイの経営者・管理者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「こども性暴力防止法」の概要と、放デイ事業者が施行前に必ず行っておくべき「5つの実務準備」について、分かりやすく解説します。
放デイはどう関係があるの?
本法律では、対象となる事業者が「学校設置者等(義務対象)」と「民間教育保育等事業者(認定対象)」の2つに分かれています。
放デイ(児童福祉法に基づく指定障害児通通所支援事業)は、国や自治体から指定・認可を受けてサービスを提供する施設であるため、「学校設置者等」に当てはまり、法律上の義務を負う対象となっています。
つまり、放デイ事業者は、「任意で取り組めばいい」のではなく、「必ず法律に則った措置を講じなければならない」ということになります。
放デイがやらなければならないことは?
放デイ事業所が実施しなければならない措置は、大きく分けて以下の4つです。
①職員の「犯罪事実確認」(前科の有無の確認)
こどもに接する業務に従事するスタッフについて、特定性犯罪の「前科(特定性犯罪事実該当性)」がないかを国(こども家庭庁)へ照会・確認する義務があります。
- 新規採用時・異動時:実際にこどもと接する業務に就かせる前までに確認が必要です。
- 現職スタッフ(施行時現職者):施行後3年以内(令和11年12月24日まで)に全員の確認を完了させる必要があります(国のシステム負荷を避けるため、順次分散して申請します)。
- 5年ごとの再確認:一度確認した職員も、5年ごとに再確認が必要です。
②日頃からの未然防止・早期把握・相談体制の整備
性暴力を未然に防ぎ、万が一の兆候を早く察知するための体制を作ります。
- 日常観察と定期的な面談・アンケートの実施
- 職員に対する研修の実施(座学と演習を組み合わせたもの)
- 事業所内および外部の相談窓口の設置
- こども・保護者への周知
③事案発生時の適切な対応(調査・保護・支援・防止措置)
もし性暴力や、その前段階である「不適切な行為」の疑いが生じた場合、事業所は以下の対応を組織的に行わなければなりません。
- 被害を受けたこどもの安全を第一とした、速やかな事実関係の調査
- 加害が疑われる職員とこどもの接触回避(一時的な自宅待機命令や業務外しなど)
- 警察や所管行政庁などの関係機関への速やかな通報・連携
④徹底した情報管理
犯罪事実確認の結果(犯歴情報)は、極めて機微な個人情報です。
- 情報管理責任者の設置と、情報管理規程の策定・遵守
- 犯歴情報の閲覧者を最小限に限定し、システム外での記録・保存を原則避けること
- 法律で定められた期限(離職から30日以内など)での確実な廃棄・消去
- 実施状況を記録した帳簿の作成(5年間保存)と、こども家庭庁への毎年の定期報告
施行前に放デイ事業所が準備すべき「5つのこと」
施行日(2026年12月25日)に慌てないために、今から着実に以下の準備を進めておきましょう。
①対象となる「職員(教員等)」を特定する
事業所で働くスタッフのうち、誰が「犯罪事実確認」の対象になるかを整理します。
放デイにおいては、管理者、児童発達支援管理責任者、保育士、児童指導員、指導員、機能訓練担当職員、看護職員など、直接こどもに接する職種は原則として全員対象です。
また、送迎ドライバーや事務員であっても、実態として「一対一でこどもと接する機会(閉鎖性・継続性・支配性)」がある場合は対象に含まれます。
②こども性暴力防止法関連システムへの登録(GビズIDの取得)
犯罪事実確認の申請や完了報告は、国が構築する専用のオンラインシステム上で行います。
このシステムを利用するためには、まず事業者向けの認証IDである「GビズID(プライム)」の取得が必要です。
既に取得済の事業者が多いかと思いますが、もしまだ取得していない場合は最優先で申請しましょう。
③就業規則・雇用契約書(服務規律・懲戒事由)の改訂
法に基づく「配置転換」や「自宅待機命令」、「採用内定の取り消し」、「懲戒処分」を適切に行うためには、あらかじめ就業規則等にその根拠規定(懲戒事由や服務規律)を明記し、職員に周知しておく必要があります。
- 「児童対象性暴力等」や「不適切な行為」の禁止と懲戒事由への追加
- 採用時の条件として「特定性犯罪の前科がないこと」を明示し、誓約書を求める仕組みの整備
- 犯歴情報の取扱者に対する秘密保持義務と、違反時の懲戒規定
これらを募集要項・求人票、誓約書・内定通知書、就業規則に反映させる際には、こども家庭庁から参考例が出ていますので、ご参照ください。

④事業所内の体制整備(責任者の選任と情報管理規定の策定、窓口設置)
- 「犯罪事実確認の責任者」および「情報管理責任者」を選任します(小規模な事業所では兼任や1人体制も可能です)。
- 犯罪事実確認記録等を適正に管理するための情報管理措置として、情報管理規定を策定します。
- こどもや保護者が相談しやすいよう、事業所内の相談窓口(担当者)を決め、外部の公的な相談窓口一覧も整理しておきます。
情報管理規定については、こども家庭庁よりひな形が出ていますので、ご参照ください。

⑤現職スタッフへの事前説明と研修の計画
スタッフに対して、法制度の趣旨や、これから犯罪事実確認を行うこと(戸籍謄本等の提出が必要になること等)を丁寧に説明し、理解を得ておきます。
また、スタッフ全員がこどもの権利を守るための意識を持てるよう、施行前(またはこどもに接する業務に従事する前)に、未然防止に関する初期研修(座学と演習)を受講できるよう計画を立てましょう。
研修については、こども家庭庁から研修動画や教材が出ていますので、ご参照ください。

おわりに
こども性暴力防止法への対応は、単に「前科を調べる」だけにとどまりません。就業規則の改訂などの労務管理、情報管理規程の作成、さらには日頃の事業所運営ルールの見直しなど、極めて多岐にわたる準備が必要となります。
法律の施行は2026年12月ですが、今から準備を進めておかないといけないことが多くありますので、早めの行動をおすすめします。
参考資料
こども家庭庁 こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)

